神戸地方裁判所 昭和63年(わ)845号 判決 1989年4月14日
本籍
兵庫県尼崎市建家町九二番地
住居
同市杭瀬北新町一丁目一番一二号
会社役員
佐伯正明
大正一二年一〇月一三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官江畑宏則出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、自己の所得税を免れようと企て
第一 昭和六〇年分の実際の総所得金額は三、五三三万七一九円で、これに対する所得税額は一、四三九万六〇〇円であるにもかかわらず、継続して、有価証券を売買したことによる所得のすべてを除外するなどの行為により、その総所得金額のうち二、六九一万二、四六六円を秘匿した上、同六一年三月一五日、兵庫県尼崎市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署において、情を知らない税理士高岡章を介して同税務署長に対し、同六〇年分の総所得金額が八四一万八、二五三円で、これに対する所得税額が九八万八、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、四三九万六〇〇円との差額一、三四〇万一、八〇〇円を免れ、
第二 昭和六一年分の実際の総所得金額は一億一、八八一万二、九四二円で、これに対する所得税額は六、九二七万四、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その総所得金額のうち一億八六八万七、九二〇円を秘匿した上、同六二年三月一四日、前記尼崎税務署において、情を知らない税理士高岡章を介して同税務署長に対し、同六一年分の総所得金額が一、〇一二万五、〇二二円で、これに対する所得税額が一〇九万五、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額六、九二七万四、二〇〇円との差額六、八一七万八、四〇〇円を免れ、
第三 昭和六二年分の実際の総所得金額は二億二、二四八万九、五八八円で、これに対する所得税額は一億二、四五一万九、七〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その総所得金額のうち二億一、〇九六万二、八九六円を秘匿した上、同六三年三月一一日、前記尼崎税務署において、情を知らない税理士高岡章を介して同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額が一、一五二万六、六九二円で、これに対する所得税額が一三二万三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億二、四五一万九、七〇〇円との差額一億二、三一九万六、七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述並びに検察官(六通)及び大蔵事務官(九通)に対する各供述調書
一 高岡章の検察官及び大蔵事務官(五通)に対する各供述調書
一 星屋和紀、大西清志、加藤一彦、今井福次、今長谷真の大蔵事務官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の昭和六三年六月一五日付、同年五月二五日付、同月三〇日付、同年八月一一日付、同年一一月一九日付(検甲一一号、一二号)、同年七月一四日付、同年六月一四日付、同月一三日付(検甲一八号、二一号)、同月二日付、同月一日付(検甲二四号、二五号)、同年七月一三日付各査察官調査書
一 大蔵事務官作成の報告書三通
一 検察事務官作成の電話聴取書
判示第一及び第二の各事実につき
一 大蔵事務官作成の同年六月一四日付査察官調査書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(含昭和六〇年分所得税確定申告書謄本)
判示第二及び第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の昭和六三年六月二〇日付、同月一三日付各査察官調査書
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(含昭和六一年分所得税確定申告書謄本)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(含昭和六二年分確定申告書謄本)
(法令の適用)
いずれも所得税法二三八条(罰金併科)
併合罪加重
刑法四五条前段
懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき同法四八条二項
労役場留置
同法一八条
懲役刑の執行猶予
同法二五条一項
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤道夫)